博士号保持者の何割が大学教員になれるのか関心があった。自分の実感では半数まではいかないまでも、かなりの数の人がなれるのでは、と思っていた。そんな時にある本に出会った。それは、中公新書ラクレの一冊で、櫻田大造氏による『大学教員 採用・人事のカラクリ』という本だ。
まだ読了していないのだが、私が長年いだいていた疑問、博士号保持者の何割が大学教員になれるのか、という疑問に対して答えてある。そこには次のような文章がある。「博士課程新卒者の大学教員就任率は、1965年から10年間程度はおよそ35%前後だったが、その後30%を下回るようになり、91年頃の約25%から05年の約15%までほぼ一貫して下がり続けている。」(p.40) この数字だが、2023年の現在はもっと下がっているのではと推測される。もちろん理系とか文系の違いとか、各種研究機関への就職などの要素もあるが、とにかく単純な数字だけだが、この様な数字だ。
他のページでは次のような数字を示している。「03年頃には毎年博士が1万人ほど誕生しているのに対して、専任教員や研究所研究員の求人数は、当時1年に3000人ぐらいしかなかったようだ。」(p.48)ここでは、研究所研究員の求人を含めているので、比率がやや高くなっている。しかし、7割の人が思うような研究職には就けないという現実がある。
以前、ある研究所勤めの方から大学での職探しの手伝いを依頼されたことがあった。その方は退職後も研究したくて色々な方にお願いしているようだ。その方の経歴書を見せてもらったが立派な研究歴の持ち主であり、そんな方でも必死で次の仕事を探しているのかと驚いたことがあった。なお、その方が最終的には大学に移れたかは聞いていない。
とにかく、大学の研究に比べると、民間企業での研究はやはり縛りが厳しくて自由な研究は難しいようだ。でも、民間の研究所から大学の研究職への異動はよく見られることであり、その方の希望がうまくかなえられたことを願っている。
私も博士号は持っている。私の就職した時代は修士号だけで十分であった。だが、勤務先にお願いして大学に勤務しながら、近隣の大手の大学の博士課程に在籍して、週に何回か通うことで、博士号を取得できた。私はすでに大学に就職していたし、研究を深めたいという軽い気持で博士課程に在籍したのだ。ただ、それから他大学に移るときは博士号はある程度役になったようだ。
いまでも、文系ならば、博士号は必要ではない、と思っていたのだが、実は、そうではないようだ。Jrec-inで調べると、常勤の教員には文系でも博士号を要求している。非常勤の場合は修士号でも大丈夫のようだ。とにかく、現代は、博士号は大学研究者にとって文系でも必須となった。しかし、若い頃の3年間は貴重だ。博士課程に在籍して、結果として大学教員になれなかったならば、この3年間がもったいないことになる。