非常勤講師の方で、もう40歳、あるいは、もう50歳の方は、時々は絶望感に襲われることと思う。

ある学会の懇親会で、40歳ぐらいの方と話し合うことがあった。互いに研究する分野が重なり合うこともあり、大いに盛り上がった。

しばらくしたら、その方はやや真剣な顔をして「どこか職はないでしょうか」と言ってきた。詳しい話を聞くと、結婚していて家族を養わなければならないとのこと。子供もだんだんと大きくなって金がかかるようになってきている。現在は非常勤講師の仕事をいくつか受け持って何とか生活をしているが、やはり苦しいので、何とかならないかとの相談だ。

驚いたことにその方はもう50歳だそうだ。童顏で40歳ぐらいかと思っていたら、本当の年齢はもっと上なのだ。世間で言うと50歳ぐらいだと会社などでも部長や重役の声がかかり始める年齢だ。でも、その方は、大学の教員としてのキャリアにまだ出発点にも立てていないのだ。

その方は、ボツリと「50歳にもなって、まだ非常勤なんて」と呟いた。大学が教員を採用する場合は、新人ならば、せいぜい40歳代の前半までか、50歳を超えていたら、他大学の中堅の教授を採用ということになる。

50歳を超えて非常勤講師の経歴しかないときは、採用はやや不利になる。しかし、50歳を超えて、非常勤講師の経歴もない場合は、これは非常に不利になる。その意味では、非常勤講師の仕事は1コマでも2コマでも続けておく必要がある。急に教員が都合が悪くなって、産休や病気や急逝のピンチヒッターが必要になることがある。

私はその方には、「現在の非常勤の仕事をきちんと続けて、いろいろな所に応募を続ければ道は必ず開ける」と語った。その方は、もう後戻りはできない年齢なのだ。あとは、道は開けると信じて、応募を続けるしかないのだ。

懇親会では、その方を色々と元気付けたが、その方はその後どうしただろうか。それ以降は会っていないのだが、その方のその後が心配になる。