ある出版社から、研究書出版のための案内のパンフレットが送付されてきた。色々なことが書いてあるが、要は、自費出版のすすめだ。ただ、自費出版するだけの金銭的な余裕がない人が多いので、刊行助成金に応募とか色々な方法があるので、そのノウハウを出版社が教えてくれるのである。

昔と比べれば本を出すコストは下がってきている。今は、執筆者は自分でワードか一太郎にデータを入れて出版社に送れば、出版社の編集の係は簡単にプリントアウトしてくれる。昔は活字を拾って製版していたが、今はそんなことはしない。印刷だけならばかなり安くなるだろう。もちろん、単に印刷するだけではなくて、宣伝費、取次店への費用などが加わるが、私が本を出した頃は100万円~200万円ぐらいだったように記憶している。今は、もっと安くなっているだろう。

さて、無理をして出版しておくと就職にいいのかという疑問がある。結論的に言えば、就職に有利になるだろう。博士論文などを書き上げたら、それをどこか出版社にもちこんで形あるものにしておくと公募に応募するときに使えることが多い。しかし、たしかに、使えることが多いが、まったく役に立たなかった。単に出版社にお金を貢いだだけとなる場合もある。こればかりは実際に出版して見ないと分からない。

そのようなことを承知した上での話だが、出版したら、その学界の有力者などに送っておくのはいい。丁寧に読んでくれてコメントを返してくれる方もいる。まったくなしのつぶての方もいる。ただ、雑誌や論文の抜粋を送るよりは、本の形を取ってあるものの方が印象には残りやすい。人々が蔵書整理で不要書類を捨てる場合も、雑誌や論文の抜粋などは簡単に捨てられるが、正式の本という形だと、やはり手元に置いておこうかという気持になる。雑誌と比べると、本のタイトルと著者名は記憶に残ってゆく。

ただ、非常勤講師を長く続けていて金銭的な余裕がない人は、グループで、たとえば、5~6 名で論文集などを出すのはよいことだ。一人あたりの買い取り負担額が20万円ぐらいとしよう。そして、それらの冊数の半分は学界の有力者たちに送り、のこりの冊数は大学の公募に応じるときに、提出するために取っておこう。

そんなことをして100%就職が確定するかは分からないが、少なくとも可能性は高まるであろう。研究書出版はペイするかどうか、こればかりは実際にやってみないと分からない。だが、若手の人で集まって論文集などを出すのは費用も少ないので、やってみる価値はあるだろう。