大学も生き残りのために必死である。そのためには、大学の名前が知られなければならない。知名度を上げる1つの方法として、有名人を教授として採用する方法がある。常勤の教授としての採用は無理としても、客員教授として採用して、年に数回講演をしてもらうことで、その有名人は大学の顔となることができる。

コツコツと研究を続けてきた人たち、いわば地道に頑張ってきた人はあまり報われない。一方、テレビなどでちょっと売れると、いくらでも御座敷がかかる。

勤務校で、ある時に、テレビのタレントに講演会の講師を依頼したことがあった。その方は講演慣れしているのだろう、とても面白い講演であった。それを機会に、その方に、客員教授に就任してくれと依頼したが、多忙ゆえに断られた。その方にとって、東京にある大学ならば、客員教授の仕事も引き受けやすいのだろうが、地方の大学では往復の時間がもったいのだろうと思う。

さて、有名人でも、特にどのような人に採用の声がかかるのか見てみる。元官僚、NHKに勤務した人、新聞社に勤務した人、出版社に勤務した人、本を書いてある程度以上名前が売れた人、などに声がかかる。本人としては、定年退職となったが、まだまだ働きたい場合は、大学教授の仕事は渡りに船となるのである。

有名人は学生の間でも人気も高い。その人の研究室には学生が絶えない。学生たちも有名人とお話ができるということで大喜びである。

私は地味な研究を続けてきた。助手、講師、准教授(助教授)を経由して、やっと教授になったのだ。たくさんの論文を書いたり学会に発表したりして、この地位まで、やっとたどり着いたのだ。でも、有名人は、そんなプロセスを飛ばして、すぐに教授となり、比較的高い給料を得る。

出来るだけ、スター教授を揃えて高校生にアピールしたいという大学の戦略は成功している例が多い。私のような平凡な教授は、やや僻んでしまうが、世の中はそのようなものだと受け止めるしかない。