だれでも、自分が本当に研究したい分野があります。動物学を勉強している院生がいるとします。本当はタヌキの研究がしたいのだが、その分野では募集している学校がないとします。それならば、募集件数の多い、キツネの研究に鞍替えしようか、などと迷っているとします。こんな院生にはどのようなアドバイスが必要でしょうか。
新規募集をする大学は、新規採用の教員には、この科目とこの科目を担当してもらおう、とすでに計画を立てています。あまりに専門外の教員を採用すると、無理なカリキュラムを組むことになります。あるいは、将来、学部や大学院の新設の時に、文科省に教員の業績表を提出しますが、そのときに適格な教員がいないとされて、新設が認められなくなる恐れがあります。大学の方も必死で新規教員を探すのです。
論文の数とタイトルは重要です。タヌキに関する論文を5本書いたら、キツネに関する論文も2,3本は書きましょう。できたら、アライグマやイノシシやクマなどについても1本ぐらいは書いておくといいでしょう。
自分はやはりタヌキしか関心がないというのならば、「タヌキとキツネの生態の比較研究」というような論文ならば、書けるのではないでしょうか。
最近は純粋に学問的な研究よりも、実用的な、応用の利く分野での募集が増えています。多くの研究者が純粋な学問研究をしたいのだが、時代の要請に応えて、応用的な分野での研究を行っている例もあります。そんなことを考えたら、「タヌキの駆除の効果的な方法」というような応用研究ですと現代では需要があるかもしれません。
さて、そんなことで、首尾よく採用となったら、それからタヌキの研究に専念していけばいいのです。現時点ではとにかく大学の教員に採用されなくては話が始まりません。採用と言っても、任期付きではなくて、正式に採用された教員が望ましいのです。そこで、安心してタヌキの研究を始めるのです。
でも、いざタヌキの研究を始めようと思っても、それまでのプロセスが長いと疲れ果てて、もうタヌキの研究をするだけの、若い頃の気力は残っていない、などということもあります。