先日、ある若手の非常勤講師の方と話をすることがあった。その方は常勤の仕事を求めていろいろと公募にアプライをしているそうだ。

その方は30歳の後半である。まだ若手である。有名国立大学の文系の博士号を持っていて、本も何冊か出版していて、論文数もそこそこある。jrec-inを通していくつかアプライをしている。しかし、有名国立大学の博士号があってもまだ常勤の仕事は見つからないそうだ。

大学の職を求める場合に40歳というのが一つの壁になる。40歳前だとまだ若手という印象だ。40歳を超えると中堅となり、業績もそこそこないといけない。その方は、40歳になるまでに、なんとか定職に就きたいと述べていた。

私が大学での職を必死で求めていた頃を思い出す。その時期とこの方の今の時期とが重なる。私の場合は、ラッキーにも40歳前に常勤講師の地位に就けたが、その方はまだである。

その方から聞いたお話は次のようなことだ。

(1)自分の研究分野に少しでも関係がありそうならば、公募にアプライをしている。
(2)自分と似たような環境の若手と連絡を取り合っている。しかし、ライバルになることもあるので、すべての情報は開示しない。
(3)学会にはたくさん入っている。発表もたくさんしている。懇親会にも積極的に出て交流の輪を広げている。雑務も引き受けるようにしている。
(4)任期付きの職でもいいから、とにかくどこかの大学にもぐり込みたい。そして自分の研究室がほしい。
(5)結婚していて、奥さんから支えてもらっている。子どもはいないが、常勤の仕事が見つからないと子どもはつくれないかもしれない。とにかく、安定した仕事に就かないと奥さんに対して申し訳ない。

話していると親しみやすいし、頭の回転が早くて、人からは好感が持たれる方という印象だ。そんな方でも定職を見つけるには苦労をしている。要は、求職者数があまりに多いという現実がある。職を見つけるのは、私が大学の教員になった頃と比べると格段と難易度は上がったようだ。

もしも、私が今20代ならば、アカデミックの場では職を見つけないな。どこか手堅い仕事にさっさと就いていると思う。もしも、30代ならば、もう引き返すことはできないので、最低でも、非常勤講師の仕事を複数持ちながら年収200万ぐらいで生きてゆく道を探すことになる。仕事を持った女性と結婚して支えてもらいながら生きてゆくのもいいが、結局は非常勤講師のままで終わったら、その女性に対して大変格好悪いし申し訳ないなと思うだろう。自分の将来に賭けてくれた女性の期待に応えられなかったという格好悪さが残るだけだ。