ネットで、「東大から「内定取り消し」を受けた大学教授がどうしても伝えたいこと」という記事を読んだ。読んでみて、気持ちが沈む。内定取り消しという事態を、もしも自分が受けたらどうなるか、と恐怖さえ感じる。

さて、この記事は以下のブログだ。この記事自体はいつの日か削除されるかもしれないが、一応ここに貼り付けておく。

その内容は簡単にまとめると次のようなことだ。東大に就職が決まった研究者の話(藤田医科大学教授、宮川剛氏)だ。その方は、面接の後に、人事委員長から採用のメールをいただいた。そのつもりで準備をしていたら、その後、「今回の人事選考を白紙にもどす」というメールで内定が取り消されたそうだ。

内定取り消しの大きな理由はクロスアポイントメントという就業形態であった。この方は、クロスアポイントメントという働き方を提案したのだ。それは、現職の藤田保健大学(現、藤田医科大学)と兼業しながら東大と働くのだ。そして、このかたの人件費は東大と藤田保健大学が負担するという方式だ。この働き方は、当初は人事委員長が了解したので、本人もそのつもりでいた。

しかし、この働き方は、東大の人事委員会では問題となったようだ。東大としては、「専業として働いてもらわなければ困る。各種委員会があり、学生の指導、入試の仕事があるので、クロスアポイントメント方式では、採用できない」と最終判断をしたようだ。

その後、この方は人事委員長などにコンタクトを取ろうとしたが、一切返事はなかったということだ。納得がいかないので、裁判に訴えて、2年後にようやく和解に至った。和解金に関する文面を除いては、その内容が公表されている。


私は当事者ではないから細かいことは分からない。自分は今までに、5回転職をしてきた。毎回、内定通知書をもらったが、通知書をもらっても「着任の直前になって取り消されたら」という心配は常に抱いていた。知人の話だが、ある会社に内定していた人がスキー事故で片目を失明したら内定取り消しになったそうだ。

組織にいるときはそれなりに身分保障があるが、組織から組織に異動するときは、非常に不安定になる。この期間は、それなりに気をつけなければならない。

この方も、東大で正式に働くようになるまでは、大人しくしていればよかったのだろう。その前に自分の考えをはっきりと言い過ぎたようだ。研究者としてすでに学界でも認められた存在なのだろう。そんな方でも、組織から組織へと異動するときは、脆い存在となる。

日本における研究風土の問題、研究者の採用の問題は大きなことで、関連の多くの方が改善提案をされている。国際化が進む現代において、採用が未だ不透明であることは大問題である。

ここでは、家族を養うため、生きてゆくために、ある程度の防衛策をしなければならない存在としての一個人は、どうしたらいいのかという視点で考えてみよう。

(1)面接の時は、ニコニコして、協調性のある人という印象を与える。自分の業績に自信があっても、謙虚な態度をとる。

(2)内定書を正式にもらうまでは、人に口外しない。口外して、現職の自分の後任の選考が始まり後任者が決まってしまうかもしれない。内定取り消しになったら戻れなくなることを忘れないことだ。

(3)退職の挨拶をするときに、今まで勤務した大学の悪口を言う人がいるが、これは良策ではない。今までの不満を爆発させるのだろうが、「皆様にお世話になった、自分を成長させてくれた」と無難な挨拶をするのが賢い方法だ。

(4)新任の学校では、正式に働き始めてから、初めて自分の主張を述べてゆく。試用期間があるのならば、その間はやはりおとなしくするしかないだろう。


こんなところか。あんまり格好いい方法ではないが、これは生きてゆく知恵であろう。